建築資料室

ここは、私の収集した戦前までの建築に関する資料を
紹介するコーナーです。なお、古写真・古絵葉書は
別コーナーにて紹介しております。
こちらへどうぞ。

 

江戸時代以前

○「都名所図会」全六冊六巻 秋里籬島著 安永九年 

解説・・・江戸時代中期に出版された六巻からなる案内本。
今で言う、旅行ガイドブックのようなものです。
この本は、当時大ベストセラーになった本で、
その後、続編や他の地域が手本に名所図会を出すなど
反響の大きかった本です。
厳密には建築とは関係ありませんが、挿絵の多いこの本において、
当時の京都の神社仏閣の建築物や旧所名跡等がうかがい知れる
好資料であります。

 

明治時代

○「東京日日新聞」明治十九年一月二十日付

解説・・・新聞なので、本ではないのですが、2ページに渡って
琵琶湖疎水の工事の現況が書かれています。
当時、琵琶湖疎水の工事がいかに注目されていたかが分かります。
ちなみに、この新聞には、大蔵大臣は松方正義、農商務大臣は谷干城
がなっています。

 

大正時代

○「日本住宅建築図案百種・全」伊東忠太校閲・金子清吉著 大正二年

解説・・・縦25センチ、横15センチ、厚さ3.5センチのハードカバーの豪華本。
いわゆる近代和風の住宅建築を立面図と詳細なデータで
紹介しています。一番目は小さな和風の建物で、
ページが進むにつれて、大型化し、豪華になっていきます。
最期の百番目はかなりのお屋敷で、洋館まで付属しています。
巻末には塀や門の立面図も。
ちなみに、序文は伊東忠太が書いています。

○「各種貸家建築図案及利廻の計算」近間佐吉著 大正十年

解説・・・唯一箱に入っている本。いわゆる、貸主のための問題点の解決策や
貸し方のノウハウ、運営の仕方や法令集が紹介されています。
正直、前半は堅苦しく、面白くないですが、後半には、貸家の種類を
立面図で紹介しており、読み応えがあります。
しかも、外国人用として、洋館の図面も載せてあり、
興味深いところであります。

 

昭和時代

○「朝日住宅図案集」朝日新聞社 昭和四年(昭和十一年第九版)

解説・・・東京朝日新聞社が賞金を設けて、住宅の図案を募集したものを
応募五百案のうちから八十五案まで絞り込んで編集したものです。
内容は、当時の最新デザインの住宅の立面・平面の図面と、
パース図を載せて解説しているものです。
 当時の建築のデザインがわかる貴重な資料だけでなく、
どれもオシャレな洋館で、中には、現代の建物のようなモダンなものもあり
見ていて楽しくなります。


○「建築博覧会・住宅設計図案集」建築資料協会編 昭和八年
解説・・・こちらは、建築資料協会が募集した住宅の図案を絞り込んで
まとめたものです。こちらも朝日住宅図案集のように、
立面・平面・パース図を載せ、設計者の解説を載せて紹介しています

ただ、この図案集は、建築予算に応じて、甲・乙・丙の三種にわけています。
こちらもオシャレな洋館がほとんどです。


○「工事年鑑 皇紀二五九七」株式会社清水組 昭和十二年
○「工事年鑑 皇紀二五九八」株式会社清水組 昭和十三年
解説・・・縦30.5センチ・横24センチという大型本です。
内容は全ページに渡り、清水組の手がけた建築物の写真が載せられ
もう失われて見ることの出来ない建物もあるなど、非常に資料性の高い
重要な書籍となっています。中は、建物の用途別に分類されています。

非売品の貴重な資料です。


○「建築写真集 第四編」竹中工務店 昭和十四年
解説・・・こちらは、竹中工務店が手がけた建築物をほぼ全ページに渡り
写真で紹介しています。この本も、工事年鑑と同様
失われた建物を
写真で見ることが出来るため、資料的価値の高い本となっています。
この本も、非売品になっています。


○「新時代の住宅建築構造図解」増山新平著 昭和十四年
解説・・・住宅を設計するに当たり、建物のデザインや
間取り、各設備や調度品を解説したマニュアルのようになっている
解説本です。挿絵として、建物や各施設の写真、調度品のイラストが
載せられており、当時のデザインや流行を知ることのできる良い資料です。
特筆すべきは、武田吾一が序文を書き、さらに、武田吾一邸の写真と武田の論文が
載せられていることです。

 

○「住宅建築懸賞設計図案集」建築学会 昭和九年
解説・・・この本は、建築学会の主催する第八回建築展覧会第二部の
応募作品から優秀なものを選りすぐって紹介した本です。
11作品紹介されており、そのなかでも空襲に備えた設計のされている
住宅もあり、興味をそそられます。

 

 

 

現代刊行本でよく参考にする書籍

○「新版 日本近代建築総覧」日本建築学会 昭和55年(平成6年第2版)
解説・・・近代建築を研究しているもの、近代建築を探索するものにとって
もはやバイブルとも言うべき本。13000件の物件が収録されており、
探索時には非常に参考になります。
しかし、発行されてからすでに24年、私の持っている第2版でも10年経っているため
収録物件ですでに失われたものも多く、未収録物件も多いです。
辞典のような大きくて重い本。

 

○「日本の近代土木遺産」土木学会 平成13年
解説・・・近代土木遺産を中心に全国の物件を収録している書籍。
近代建築総覧のような感じで書かれています。
それと同時に、編者によるランク付けもされており、
読んでいても中々面白い本です。
土木中心ですので、西洋館は余り取り上げられておりません。
また、あくまで土木遺産としての価値からの視点なので
ランク付けに「?」と思ってしまう面もありますが、
総覧にはほとんど取り上げられることのなかった土木遺産が
かなり網羅されていますので、かなり使える資料です。
総覧ほどではないですが、こちらも大型の本。

 

○「京都府の近代化遺産 京都府近代化遺産総合調査報告書」(コピー)
京都府教育委員会 平成12年
解説・・・全国の都道府県で行われている近代化遺産の調査の
京都府版。京都市内の近代建築はこれまでもいろいろなところで
調査されているせいか、この書籍は、京都府を中心に調査されています。
かなり細かく探索されており、これでほとんどの府内の物件が
近代建築総覧や近代土木遺産と合わせて網羅されたのではと思っています。
この本により、HPにUPしていた物件で年代等が分からなかった物も
幾つか判明しました。
全体として、府内の各物件で選んだものをそれぞれ紹介し、京都市の物件は
全体の解説でとどめ、最後に調査で確認された物件を総覧方式で紹介しています。
この本は、近代化遺産ですので、洋館だけでなく、近代土木も取り扱っています。
平成12年発行ですので、資料としても新しく、その点においても非常に好資料となるのですが
しかし、収録されている物件で、すでに失われたものも幾つかありました。
あと、まだ漏れているものもありますね。
こことかこことか・・・(フフフ)

 

 

 

 

 

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